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   >>>>> ABC 証券アナリスト メールレター Vol.66 <<<<<

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■■□──────────────────────2009/11/30号

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 バックナンバーは、http://abcr.co.jp/mail-letter/でご覧いただけます。
   
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   【1】 第1次レベル リスク態様と期待効用関数
   【2】 第2次レベル 誘導型アプローチによるデフォルト債評価
                          
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   【1】 第1次レベル リスク態様と期待効用関数
   
     株式や債券などの証券投資や消費計画を考えるとき、その投資がどの
    程度のリスクを持ち、どの程度のリターンが得られるかが問題となる。
    投資によってもたらされるリターンとリスクが不確実であるため、不確
    実下での意思決定を考える必要がある。その意思決定において投資家の
    効用関数が重要な要素となる。
   
    1.リスクと効用関数
     投資家の効用Uは資産価値χ(もしくは、消費計画、以下同様)の増
    加関数として定義されるとき、資産χ円の投資家の効用U(χ)が、次
    式として与えられたとする。
   
      U(χ)=aχ−χの2乗   (なお、aは定数項である)
     具体的に、次のような効用関数であるとする。
      U(χ)=300χ−χの2乗
   
     今、資産Aについて、(a)確実に価値を得ることができる場合と(b)不
    確実な価値しか得ることができない場合の2つがあるとする。このとき、
    上記の効用関数の下における効用はいくらか計算してみる。
    ┌(a) 確実に75万円が得られる場合
    └(b) 確率1/2で100万円、確率1/2で50万円の不確実な価値が得
       られる場合
   
     (a)確実な資産価値が得られる効用と(b)不確実な資産価値が得られる
    効用は次のとおりである。
    【(a)確実な資産価値(χ=75万円)の効用】
     U(χ)=U(E[χ])=300・χ−χの2乗
                 =300・75−75の2乗=16,875
    【(b)不確実な資産価値の効用】
     不確実な資産の効用とは、それぞれの資産価値の効用にその生起確率
    を用いて計算された将来得られるであろう期待効用のことである。
     将来得られるであろう期待効用E(U)は、次式より求められる。
     なお、Eは予想または期待のExpectationの頭文字、pは確率のproba
    bilityの頭文字、iは事象が起きる状態を示す。
     ┌──────────────────────────┐
     │E[U(χ)]=Σp(i) ・U(χ(i))        │
     │   期待効用=Σ(生起確率×資産価値の効用)   │
     └──────────────────────────┘
             =[1/2・U(χ=100)]+[1/2・U(χ=50)]
             =(1/2・20,000)+(1/2・12,500)=16,250
   
     以上から、確実な資産75万円から得られる効用U(E[χ])は16,875、
    不確実な資産の期待資産価値75万円から得られる期待効用E[U(χ)]
    は16,250であり、確実な資産価値75万円の効用の方が大きい。
     つまり、同じ期待資産価値を生み出すものであっても、確実に得られ
    る資産価値の効用U(E[χ])の方が不確実な資産価値の期待効用(関
    数)E[U(χ)]よりも大きい。
   
     この効用関数は、次の2つの性質を満たす。
    ┌(a) 資産価値(貨幣額)が大きければ大きいほど、効用が大きい。
    └(b) 保有する資産価値(貨幣額)が大きくなればなるほど、追加的
       に得られる1円当たりの効用(限界効用)の増加分は小さくなる。
       これを限界効用逓減の法則という。
     上記(b)の性質を満たすものであれば、この投資家はリスク回避者であ
    り、この効用関数は、(下に見て)凹型の形状(凹関数という)になる。
    
    2.リスク態様と期待効用関数
     (1) リスク回避型の期待効用関数
       下に凹型の効用関数をもつ投資家をリスク回避的(者)という。
     ┌──────────────────────────────┐
     │下に凹関数の条件:リスク回避的投資家            │
     │            → U(E[χ])>E[U(χ)] │
     └──────────────────────────────┘
   
     (2) リスク愛好型の期待効用関数
       リスク愛好的な投資家は、資産価値が増加するほどにどん欲にお
      金を求めるので、効用はより以上に逓増する。
     ┌──────────────────────────────┐
     │下に凸関数の条件:リスク愛好的投資家            │
     │            → U(E[χ])<E[U(χ)] │
     └──────────────────────────────┘
   
     (3) リスク中立型の期待効用関数
       リスク中立的な投資家はリスクを無視するので、資産価値が増加
      しても効用の増加は逓減も逓増もせず、直線的に増加する。
     ┌──────────────────────────────┐
     │効用関数は直線:リスク中立的投資家             │
     │            → U(E[χ])=E[U(χ)] │
     └──────────────────────────────┘
   
      以上をまとめると、次のようになる。
      ① リスク回避的な投資家ほど、確実な投資計画の方を同じ期待値
       を持つ不確実な投資計画より好むので、不確実な投資計画に要求
       するリスクプレミアムは大きくなる。
      ② リスク愛好的な投資家は、確実な投資計画の効用よりも不確実
       な投資計画の効用が大きいので、要求するリスク・プレミアムは
       負となる。
      ③ リスク中立的な投資家の場合、「確実な投資計画の効用」と
       「同じ期待値を持つ不確実な投資計画の効用」は同じ(無差別)
       なので、リスク・プレミアムはゼロとなる。
   
   ┌──────┬─────────────┬─────┬─────┐
   │  投資家  │  効用の大小      │リスクプレミアム │関数の形状│
   ├──────┼─────────────┼─────┼─────┤
   │リスク回避者│U[E(χ)]>E[U(χ)]│  正  │ 凹関数 │
   ├──────┼─────────────┼─────┼─────┤
   │リスク愛好者│U[E(χ)]<E[U(χ)]│  負  │ 凸関数 │
   ├──────┼─────────────┼─────┼─────┤
   │リスク中立者│U[E(χ)]=E[U(χ)]│  ゼロ  │  直線  │
   └──────┴─────────────┴─────┴─────┘
   
    3.確実性等価額とリスク・ディスカウント額
     (1) 確実性等価額
       確実性等価額とは、「確実な資産価値の効用 (左辺)」と「不確
      実な資産の期待効用 (右辺)」とが等しくなる資産価値額Xをいう
            U(X)=E[U(χ)]
         U[E(X)]=E[U(χ)]
    「確実な資産価値」の効用=「不確実な資産」の期待効用
   
     (2) 不確実な資産価値の期待効用
       もし仮に、将来の株価が確率1/2で100万円得られ、確率1/2
      で50万円が得られるとする。この不確実な資産価値の期待効用
      E[U(χ)]は16,250と計算された。
       この時、リスク回避的な投資家の効用関数から、16,250という効
      用をもたらす資産価値額が確実性等価額Xという。
         E[U(χ)]=U(X)
       ∴ E[U(χ)]=16,250=U(X)
         U(X)=300・X−(X)の2乗=16,250
       この確実性等価額Xは、2次方程式の解の公式を利用して求める
      ことができる。
        (−)(X) の2乗+300・X+(−)16,250=0
       
        X=70.94万円
           ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     (3) リスク・ディスカウント額
       確実性の下における資産(株価)の価値E(χ)と不確実性の下
      における確実性等価額Xとの差額をリスク・ディスカウント額とい
      う。
        リスク・ディスカウント額=E(χ)−X
                    =75万円−70.94万円=4.06万円
   
       つまり、確実に75万円が得られる資産の価値(価格)と比較し、
      75万円という期待値が得られる不確実な資産価値は70.94万円とい
      うことである。不確実に見合ったリスク相当分、リスク資産の価格
      は値引きされているからである。
   
   
   
   【2】 第2次レベル 誘導型アプローチによるデフォルト債評価
   
     この誘導型アプローチによるモデルは、デフォルト債が生み出す将来
    キャッシュフローを離散型の2項分布モデルで仮定するものである。
     このモデルでは、デフォルト確率を(1)リスク中立デフォルト確率を用
    いて評価する方法と(2)実績デフォルト確率を用いて評価する方法がある。
   
    (1) リスク中立デフォルト確率を用いた評価
      ここでの「リスク中立デフォルト確率」とは、投資家がリスクを考
     慮せず期待値のみに関心を持つという意味での中立的(リスクフリー
     ・レートが確保できる確率=リスク中立確率という)であることを意
     味するのでは無く、投資家のリスク回避(あるいは愛好)傾向を織り
     込んで計算されたデフォルト確率を意味する。
      リスク回避的な投資家は、リスク中立的なデフォルト確率を実際の
     デフォルト確率より、回避傾向を織り込んで高く推定していると思わ
     れる。
     
      今、残存期間1年のデフォルトのある割引社債があり、そのリスク
     中立デフォルト確率をp、デフォルト時の回収率をRR(80%)、ま
     たは、デフォルト時の損失率をLGD(LGD:Loss Given Default
     rate )(=1−RR)と見積もられていたとする。この時、1年物
     無リスク金利(1年物スポット・レート)がR(F)%、1年後の元本
     償還額C(t=1)=C(1)とする。
      この場合のデフォルト債の価格PV(0) は、次のように計算される。
   
              1年後の期待回収額    E(C(1))
      PV(0) =──────────────=───────
           (1+リスクフリー・レート) (1+R(F))
           
            p(1) ・RR・C(1) +(1−p(1))・C(1)
          =──────────────────────
                   (1+R(F))
      又は、
     ┌────────────────────────────┐
     │      p・(1−LGD(1))・C(1)+(1−p)・C(1)  │
     │PV(0)=──────────────────────  │
     │             (1+R(F))         │
     └────────────────────────────┘
   
     また、分子の期待回収額を展開すると次式を求めることができる。
      E(C(1))=p(1)・(1−LGD(1))・C(1)+(1−p(1))・C(1)
           =p(1)・C(1)−p(1)・LGD(1)・C(1)
                          +C(1)−p(1)・C(1)
           =C(1)−p(1)・LGD(1)・C(1)
           =(1−p(1)・LGD(1))・C(1)
   
     この時の(1−p(1)・LGD(1))を確実性等価係数といい、α(1)
    と表記する。
     ┌────────────────┐
     │ α(1)=1−p(1) ・LGD(1) │
     └────────────────┘
   
     デフォルト債がある場合、デフォルト確率を考慮し、確実に回収でき
    る金額に等しくする係数という意味である。つまり、デフォルト債の評
    価額である。
   
     この確実性等価係数を用いて、デフォルト債を評価すると次のように
    なる。
            p(1)・(1−LGD(1))・C(1)+(1−p(1))・C(1)
      PV(0) =──────────────────────────
                     (1+R(F))
                     
            (1−p(1)・LGD(1))・C(1)   α(1) ・C(1)
          =─────────────────=────────
                (1+R(F))        (1+R(F))
                
                 C(1)
          =α(1) ・───────
                (1+R(F))
   
     以上により、デフォルト債の現在価値PV(0) とデフォルトのない現
    在価値ZV(0)(=C(1)/(1+R(F))が市場で取引されており、その
    市場価格が開示されていれば、確実性等価係数α(1)は次式のように推
    定することができる。
                 C(1)
      PV(0) =α(1) ・───────
                (1+R(F))
     ┌────────────────────────────┐
     │             C(1)             │
     │∴ α(1)=PV(0)/[──────]=PV(0)/ZV(0) │
     │           (1+R(F))            │
     └────────────────────────────┘
   
    (2) 実績デフォルト確率を用いた評価
      デフォルト債の評価を、今度は実際のデフォルト確率によりデフォ
     ルト債の評価を考える。
      そこで、先ず、実績デフォルト確率の計算式を明らかにする。
    ┌───────────────────────────────┐
    │               その期末における倒産件数(D(1)) │
    │実績デフォルト確率(pD(1))=──────────────── │
    │                期首における貸付先数(N(0))  │
    └───────────────────────────────┘
   
      この実績デフォルト確率pD(1) を用いてデフォルト債を評価する
     場合、実績デフォルト確率pD(1) には投資家のリスク選好が織り込
     まれていないため、信用リスク選好を評価式の分母(つまり、割引率)
     に反映しなければならない。つまり、割引率として信用リスク・プレ
     ミアムR(P) を上乗せしたリスク調整済の割引率(RADR:Risk
     Adjusted Discount Rate)を用いなければならない。
      よって、実績デフォルト確率を用いたデフォルト債の評価式は、次
     式として表わされることになる。
           pD(1)・(1−LGD(1))・C(1)+(1−pD(1))・C(1)
      PV(0)=──────────────────────────
                (1+R(F))・(1+R(P))
     ┌─────────────────────────┐
     │      (1−pD(1)・LGD(1))・C(1)   │
     │PV(0) =─────────────────── │
     │       (1+R(F) )・(1+R(P) )   │
     └─────────────────────────┘
   
      実績デフォルト確率に基づいた確実性等価係数α(1) は、次のとお
     りである。
   
      PV(0) =確実性等価係数・デフォルトなし現在価値
           (1−pD(1) ・LGD(1))      C(1)
          =────────────── ・ ────────
              (1+R(P) )       (1+R(F) )
     ┌────────────────────┐
     │     (1−pD(1)・LGD(1))   │
     │α(1) =─────────────── │
     │        (1+R(P))      │
     └────────────────────┘
   
   
                                  以上

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  次回も乞うご期待!!!
 
    テーマは、お楽しみに!!!
    
      ご希望がございましたら、是非お寄せください!!!

           
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